レアル・クラブ・デ・ゴルフ・デ・ペドレーニャ。北部スペインで最も美しい最高級のゴルフクラブである。この”ラ・リベラ”と名付けられた2番ホール(198y.par3)に隣接した一軒の農家が、セベリアーノ・バレステロスの生まれ育った家だった。
8歳からぺドレーニャでキャディをはじめたセベは、兄のマヌエルから貰った3番アイアンで、家のまえから松林越しに2番グリーンに向かって150ヤード程のショットを繰返した。コースでプレーすることを許されなかったセベは、夜明けに、夕暮れに、月明りの夜に、ペドレーニャの2番ホールに忍び込み何百回となくプレーをした。次第に力をつけたセベは、9歳のとき2本のクラブでペドレーニャをラウンドし、10歳でキャディのコンペティションに初参加。12歳で優勝を果たした。
18歳8か月でスペインのゴルフ史上最年少のプロフエッショナル・トーナメント・プレーヤーになるまで、セベのゴルフを磨き育てたのは、緑のフェアウエイと松の立木が広がるぺドレーニャのコースだった。「チャンピオンコースとは美しいものである」というセベの信念もまた、あざやかに育まれたのである。

プロ1年目でスペイン国内9位。2年目にヨーロッパ・スペイン賞金王。5年目にはヨーロッパツアーに参加。めざましい快進撃を続けたセべを、一躍世界に知らせたのは1976年の全英オープン決勝での最終ホールであった。513ヤード・パー5。パーで上がれば3位タイ。バーディならニクラウスと2位を分けるという場面で、セべの第2打はグリーン手前左の草がすり切れたラフに止まっていた。15ヤード先にバンカーにはさまれた幅2フィート程の盛り上がった小道が、速い下りグリーンに向って続いている。ピンはグリーンエッジから7ヤード。風は強いフォロー。9番アイアンを手にしたセベのショットは、風の下をくぐって小道でバウンドし、その先のコブを越えてグリーンをゆっくり這っていった。ピンを4フィート過ぎて静止したボールに、熱狂的な大喚声が勇き上った。”ミラクルバーディ”その日優勝したミラー以上にセベは賞讃された。あまりのエキサイティングさに世界中が魅了されてしまったのである。

1979年全英オープン最終日16番ホール。セベがコース上のすべてのものを味方にしてしまうことを、これほど印象強くアピールしたプレーはなかったにちがいない。353ヤード・パー4。まるでフラッグがひきちぎれんばかりの強風が、このホール攻略のセオリーとされるフェアウエイ左サイドから激しく吹いてくる。セベはグリーンを右から攻めることにした。ドライブがフェアウエイから右にそれても、芝がすり切れたラフがある。ティーグランドに立ったき、そのラフの先30ヤードに近くの駐車場から溢れた車が並んで見えた。彼はそこに向けて286ヤードの強打を放った。ギャラリーも、そして彼の兄でさえ動揺していた。しかし、車の下にあったボールを障害物からの救済によりフリードロップしたセベは、狙いどうりの完璧なサンドウエッジショットでグリーンをとらえた。上りのパットを沈め、バーディ。ロイヤルリザム&セントアンズの女神は、セベを全英オープン初優勝へと導いた。浅いラフ、観客席、駐車場、あらゆる可能性を味方にしてしまうセベのコース攻略法こそ、チャンピオンへの選択といえるのだろう。

バレステロス4兄弟。家がぺドレーニャという素晴らしいコースに隣接していた、という条件もあったであろう。セベと3人の兄弟は、全員がプロゴルファーであった。スペインがゴルフに強いのは高級なゴルフクラブが多く、その周辺に育った若者たちが、ハングリーさから脱出するためにゴルフに活路を求めるのだと言う人もいる。彼等にとってゴルフは生きるための道なのだ。バレステロス兄弟の場合が、まさにそれであった。高い水準のコースに鍛えられてトップレベルのスウイングと、攻撃的なゴルフを身に付けていく。英国のプレーヤー、ディ・リーズが、「距離もあって素晴らしいスペインのコースで、ほとんど毎日同じ天候のもとに、美しいフェアウエイで堅実なプレーを繰返していれば、ゴルフの基本的なスウイングが身に付いて、どんなショットにも対応できるようになる。」とさえ言うほどである。セベと、彼の兄が設計監修するコースの共通点を求るなら、それは申し分のない美しさに帰結するだろう

セベ・バレステロスと彼の兄弟(トラジェクトリー・スタッフ)が監修した真のチャンピオンコース。あくまでも美しく、攻撃心をくすぐられるような戦略性に満ち溢れた安平ゴルフ倶楽部。37万坪という広大な大地に展開されるゆとりの18ホールズ。巧みに生かされた自然の地形と、美しいレイアウト。攻めれば攻めるほどその深さに酔いしれる。決して妥協を許さないからこそ、ゴルファー自身の真価が磨かれる。安平ゴルフ倶楽部は、志を同じくする人々にこそメンバーシップを捧げたい、セベならではの攻めのコースといえるでしょう。
セベとその兄たちとの緻密で絶妙なコンビネーションは、彼らのゴルフ人生のすべてを丹念に語りかけてくれるでしょう。
挑戦し、自らを磨いていくというゴルファーのために、セべ・バレステロスが全知全能を傾けた18ホールズ。まるで、ヨーロッパの名門コースでプレーをするような味わいが、ゴルファーを魅了し尽くすにちがいありません。

平成3年4月21日、セベは造成中であるコースの視察の為、北海道入りした。
18ホールを彼自身の脚で入念に視察してまわり、”設計通りであり、理想的なすばらしいゴルフクラブになるであろうと語った。

PAGE TOP